みなさんは「失敗の本質」という本、または「超入門『失敗の本質』」という本を読んだことはありますか。
これらの本の主題は、1930年代から1945年までの戦争においての日本軍の失敗の原因が、今現在の日本組織・日本人の失敗と、本質的に同じで変わっていない、という衝撃的な内容です。
ちなみに私は「超入門」の方しか読んでいないですが、それでもすごく勉強になりました。
そして、
「何年も英語を勉強したのに、できるようにならない」という英語学習の失敗
にも類似している! と思ったのです。
今回は、この「失敗の本質」「超入門『失敗の本質』」で得た気づきを、英語学習にあてはめて考えてみたいと思います。
英語学習「失敗の本質」
目次
戦略が超「あいまい」!
細かいことは割愛します。この本で言っている重要なことの一つが、「日本軍は、戦略があいまいで、目標達成につながらない無駄な勝利を積み上げた」ということ。
太平洋の覇権争いで、日本軍は全体の約7割の島を占拠したが、その7割は実は戦略的に無価値だったそうです。対する米軍は、戦略的に重要な残りの3割だけを集中的に占拠して、太平洋の覇権を握ったというものです。
米軍は、「戦争で勝利する」という明確な目的のために、重要でない島には一切関与せず、勝利につながる重要な島だけに全力を注ぎこみ、集中的に占拠しました。
対する日本軍は、「何のため」に「何をする」のかが極めてあいまいで、大局的な戦略がなく、精神論で押し切ったり、その場の空気に流されたりで、戦争の中盤あたりから次々に敗北を重ねて、最終的に自国をぼろぼろの焼け野原にしてしまいました。
英語学習における「失敗」とは?
これをわたしたち日本人の英語学習にあてはめてみます。中学、高校と6年間英語を勉強しているのに、英語を使える水準にはならない。なぜか?
これは目標達成のための「戦略」があいまいだから。
「目的地」の設定と、「目的地へ至るための手段」を、それぞれ明確に定義していないから。
私の理解では、日本の学校教育の目的地は大学入試です。【建前】は違うかもしれませんし、学業以外にも、多くのことを学び、経験して、人間的に成長するのが学校教育の根幹だと思います。
しかし、広く社会を見渡してみて、多くの親御さんや企業・官公庁で働いている人が、高偏差値大学の出身者を無条件に崇めるのは紛れもない事実ですし、重役についている人は有名大学出身者が圧倒的に多いです。
「大学入試で志望校に合格するため」という《目的地》を設定して、そこへと向かって学習している以上、その学習が「社会に出てから」武器になる英語へとつながらないのは、ある意味当然だと思います。
最大の障壁は「他人まかせ」
ちなみに、日本の教育の在り方や英語教育を非難したり批判したりするのはあまり意味があるとは思いません。それよりも「自分で」「自分たちで」英語をものにするんだ!という覚悟を持てるかどうか、だと思います。
まず、他人任せや、学校教育に過度に期待するのをやめることです。
学校教育は、(全面的でなく部分的であるにしろ)目的地が「大学受験」である現実を、受け止める。目的地が「大学受験」である以上、入試問題や学校英語の内容が、いくら実用的な内容を入れ込んでいても、学校英語だけで実用レベルにはならないと知りましょう。
そうなると「仕事で使える」レベルの英語力を身につけるための「プラスアルファ」を自分で作り出すことが必須です。人任せ、学校任せ、塾任せ、スクール任せでは、絶対にできるようにはならないと肝に銘じましょう!
まず目的地を明確にする_「あいまいさ」は排除!
これが最重要です!!!まずここを明確にしないと、何年も学習にお金と時間とエネルギーを使ったあげく、それらが「無駄だった」となってしまうかもしれません。まさに日本軍のように...
自分は、または自分の子供は、「将来、英語で仕事をする水準になる」ことを目標としているのか、それとも「大学受験で志望校に入る」ことを目標としているのか...
どちらが良いとか優れているとかではなく、自分の目指しているところはどこなのか、ということを明確にしておきましょう。
「志望校に合格したいし、受験で勉強した英語がそのまま「仕事で使える」水準になったらいいな♪」と、現実を直視しないで、希望的観測を抱いている場合、どちらも中途半端で、どちらもモノにならない可能性も...米軍にコテンパンにやられた日本軍のように。
「あわよくば」や「希望的観測」は捨て去りましょう!
「何をするのか」と「何をしないのか」を決める!
今回は分かりやすく以下の2つの目的地を仮定します。
- 実用英語や英会話は不要!志望大学に入ることが命
- お子さんに将来「海外生活」や「英語を使って仕事」ができるようになって欲しい
もしあなたが、1つ目の「うちの子には、実用英語や英会話は不要!志望大学に入ることが命」のようなお考えの場合、英会話教室や実践練習はとくに必要ありません。学校の勉強と学習塾の英語で十分な対策ができると思います。
そして、もしあなたが二つ目の「お子さんに将来『海外生活』や『英語を使って仕事』ができるようになって欲しい」場合、学校での学習に加えて「アウトプット」重視の学習が必要になります。
この二つ目の場合は、学校英語はまず「中学3年間の英語」をしっかりおさえましょう。そこが弱いと、アウトプットも同じように弱くなってしまいます。
「中学3年間の英語」を、実用レベルに発展させるための練習が大切になります。
※《補足》
高校英語は文法事項が難しく、かつ量もかなり多いので、真正面から取り組むとかなり大変になります。それを全部カバーしつつ、実用英語も身につけようとすると、どっちつかずになってしまう可能性があります。
ですので、大学受験をする場合は、
- 実用英語をいったん横に置いておいて、受験に全力を傾けて、大学に行ってから再開する
- 早めに英検2級や準1級を取得して、入試での負担を大きく減らす
などの工夫が必要になります。
どんな道順がよいのか
では、お子さんに将来「海外生活」や「英語を使って仕事」ができるようになって欲しい「目的地」に行きたい場合、具体的にどんな道順をたどればいいのか??
以下の3つが大きな指標になります。
- インプットは学校英語(特に中学英語)を確実に!
- アウトプット力がキモ
- 目指すは「アドリブ・即興」型の発話力
アウトプット主体の学習
アウトプット主体の学習には、さらに2つに分けられます。一つは「型通り」の会話を反復する学習。もう一つは「アドリブ・即興」型の会話・発話練習です。
「型通り」とは、
“Where are you from?!”
“I am from ~(場所).”
や、
”Do you have any brothers and sisters?”
“Yes. I have one big brother.”
のように、決まったパターンを丸覚えするタイプです。
もう一つの「アドリブ・即興」型とは、自分の思いや考え、意見を言葉にして説明するタイプです。英検のライティング(課題作文)やスピーキング(二次試験)のような感じですね。
目指すは「アドリブ・即興」型
アドリブ・即興型は、
”What is your opinion on the early age English education?” (英語の早期教育について、あなたの意見は?)
のような質問に対し、自分の考えを相手に伝わるように説明するものです。書いて作文にしてみたり、口頭で発表して相手に伝えてみたり、という型です。
この「自分の考えをまとめて、相手に伝わるように説明する」学習は、とても良い練習です!!!
以下に「自分の考えをまとめて、相手に伝わるように説明する」学習のメリットを挙げます。
- 受け身の学習(言われたことだけをやる学習)でなく、主体的な学習になる
- 「自分の考えは?」と自問する習慣ができる
- 「なぜ」「どうして」を考える習慣ができる
- 物事を論理的に組み立てる練習ができる
- 国語(日本語)の理解も深まり、国語に応用できるようになる
- 現実社会の問題を取り扱うことで、社会問題に対して当事者意識が生まれる
- 主体的に考えて、現実社会の出来事に自分なりの視点を持つ
そして何より、これらが総じて「異なる考えを持つ人や、文化的背景の異なる人と、意思疎通を図る」ための良い土台になります。それぞれが「自分の視点」を出し合って、相手とキャッチボールをすることが、英語でのコミュニケーションのだいご味だと思います。
まとめ
あなたが、またはあなたのお子さんが、「自転車に『乗れる』ようになりたい!!」と強く願ったとします。
そのときあなたは、自転車の「仕組み」を理解し、どんな「素材や部品」が必要で、どうやって「組み立てる」のかを「しっかり勉強しなさい」と言うでしょうか?
あなたのお子さんが、修理工や自転車屋さんになりたいのであれば、それが必要になるかもしれません。
しかし「乗れる」ようになりたい!「乗れるようになって徒歩では行けない場所へ自由に行ってみたい」と思っている場合、必要なのは「乗る」ための練習ですね。
私は、これは英語学習にも同じことが言えると思います。
英語を「使える」ようになって、外国に行ったり、異文化交流をしてみたいのか。
それとも英語の「知識人」になって人に教える仕事をしたいのか...
どちらが良いか・悪いかという問題ではありません。自分はどちらを望んでいるのか?ということです。
「失敗の本質」で述べられている【失敗】をしないために、「目的地」の設定と、「目的地へ至るための手段」を、それぞれ明確に定義することから始めてみてはどうでしょうか?